
に「一般船舶が避航する中、避航することなくタグボートが三千トンもあるN号をえい航するということが問題ではなかったか。救助要請を受けた巡視船が出動できなかったくらいですから」と語った。
当日の天気を"気象"に掲載された天気図日記の一九九五年一一月八日で見ると、見出しに「爆弾低気圧」とあり、別区のとおり台風なみの低気圧だった様子がよく分かる。
事故後のタグボートの船長からの事情聴取で、えい航索には、四九ミリのワイヤロープを使っていたが、タグボートのムアリングホール(えい航索の取り出し口)でロープが何らかの原因で切断したこと、またえい航索の予備はなかったことが判明している。
自治体の対応
地元温海町では、ふって湧いたようなN号の座礁事件に振り回されることになる。
現場は、岩場が点在する風光明美な「庄内海浜県立自然公園」でサザエ、アワビ、カキ、岩のりなどの好漁場でもある。一日も早くN号を撤去しなければ、漁業者にとっては死活問題になりかねないし、観光や海水浴にも悪影響が懸念される。
地元では、酒田海上保安部、山形県、温海町、漁業関係者等でN号船体撤去に関する協議を行い、その後関係方面への連絡、折衝に入る。
その後、平成七年一一月二二日のF号側との協議を皮切りに平成八年四月二五日の中国のN号買い取り会社との間で確認書を交わすまでの間、度重なる連絡と折衝を繰り返すこととなる。
ここでは、その一つ一つを記すことは省き、どのようなところと連絡や折衝をしたのかを記してみると
在新潟ロシア総領事館
外務省欧亜局ロシア課担当官
コルサコフ救助センター
F号船長
N号所有者レトォーチィガラン
ジェッツ社社長
F号所有者サハリンシッピング
中国ハルビン、ヘイルジャン商業経済センター(N号売却先)
サハリン・コルサコフ市サフバス(N号回航請負会社)
対外経済サハリン保険協会
中国黒龍江北朕貿易有限責任公司代理人シリシェフV.V.
などの多数にわたっている。
連絡・折衝の苦労
連絡は、スムーズにいかないことが度々だった。例えば、FAX
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